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はじめまして。作曲家の明石隼汰です。

この二十数年、CM音楽やアイドルへの楽曲提供、映画・アニメなどの劇場用音楽、教材用チャンツ、こどもの歌などを多数作ってきています。

そのかたわら、学生時代からずっと興味を持って研究してきたことがあります。

それが、わかりやすい「作曲メソッド」の体系化、すなわち、皆さんが簡単にオリジナルの音楽を作る方法です。

 

学校で「作曲」を教えられないわけ

皆さんは学校の音楽の授業で「作曲」を習ったことがありますか?ないですよね。

これって不思議なことだと思いませんか?

国語では「作文」、美術では「絵を描き」ますね。しかし音楽は、既存の歌を歌ったり、(クラシック曲の)名曲を鑑賞することはあっても、自分で曲を作るという経験をした人はあまりいないはずです。楽譜の読み方・書き方は習ったことでしょう。音楽の学習指導要領には、楽譜を使った「ふし(メロディ)つくり」という項目はあるにはありますが、ちゃんと教えられている話を聞いたことがありません。

理由は簡単。作曲をする方法=メソッドが、すっぽり抜け落ちているからです。

そもそも現在の音楽教育の源流は、明治時代に西洋文明を取り入れようと体系化されたものです。そしてその目的は「近代西洋音楽の演奏家を育てる」ことであり、「作曲」をすることではありませんでした。そのため作曲メソッドは体系化されず、作曲を教えられる先生が誰もいなかったのです。

隠れた法則に「気づく」

私が作曲を始めたのは中学3年、15才のときです。その2年前にギターを始め、いろんなコードを覚えていましたが、作曲ができるようになったのは、学校では決して習わなかった「機能和声」の法則に自力で気づいてからでした。

そう。この法則は教本を読まなくても、ギターのコードを覚え「スリーコード」がわかってくるようになると、気がつき、それを駆使して作曲ができるようになる人が多いのです。シンガーソングライターにギター弾き語りをする人が多いのは、そのためです。

この「機能和声」の法則を学ばなくても、いい感性があれば自由に音楽を作ることはできます。その感性でプロとして活躍している人も多くいます。それは料理に例えれば、スーパーで好きな食材を買ってなんとなく調理したらおいしいものができた、という感じでしょうか。それはそれで十分、表現作品としては申し分ないと思います。

しかし、千年を超える音楽の歴史で体系づけられた「機能和声」という概念の習得は、今ある音楽の「基礎の基礎」となるもの。料理でいえば、包丁の使い方、調味料の使い方、ローストの仕方のようなものです。

作曲家を志す人なら当然習得する必要があるものですが、作曲をこれから始めようと思っている方、またよい曲を作ろうと苦労している方も、「機能和声」というものがどういうものかここで一度理解してみれば、目から鱗が落ちたように「なるほど!」と驚くことになるでしょう。そして、このしくみを知るのと知らないのでは、曲作りに大きな差ができることを実感なされるはずです。

わかりにくい作曲教則本の謎

「機能和声」という法則は、わかってしまえば実に簡単な「しくみ」なのです。が、それはいかんせん「音」のことなので、ことばや図で伝えることが意外と難しいわけです。

「作曲法」や「音楽理論」の本は、数え切れないほど溢れています。しかし、今まで私が見た限り、こうすれば誰でも曲を作れるよ、という明解な方法が書いてある本に未だ出会ったことがありません。

それは一体なぜなのでしょう?

作曲に興味を持って勉強しようとした人が様々な教則本を手に入れてまず直面するのが、数多い専門用語や音楽記号です。

大体の教則本の第1章は「度数」から始まるのではないでしょうか?長・短・完全・増減・重増重減・・・

音を出す前に覚えるべき用語や記号が多すぎて、これは敷居が高いとやる気をそがれてしまい、これでは多くの人が途中で挫折しても仕方がありません。

また、音楽理論はジャンルによって呼び名が違ったり、教本によってOKといったりだめといったり、中には180度違う理論が存在したりと、てんでバラバラ。この21世紀になっても全く統一されていないのが現状なのです。

その理由は、哲学理論などと異なり、数百年前から積み上げられてきた様々な玉石混交の音楽理論の多くが「一体誰が、いつ作ったのかわからない」ことにあります。

さらに、それらの理論を学んだ人がそれを新しい教則本に「子引き・孫引き」し、あたかもそれが唯一正しい法則であるかのように紹介され、その連鎖が現在まで続いているのです。

「固定ド」と「移動ド」

もうひとつ、作曲を学ぶ上で最大の障害があります。

それは、ほとんどの教則本が、「音の高さ」をあらわす「音名」と、「音と音との機能的な相関関係」をあらわす「階名」を区別していない、ということです。

最初は同じ「ドレミファソラシド」を使っていても、ハ長調以外の調になったときに「ド」の音が変わらず、混乱してしまうのです。

この方法は、音名Cの音を「ド」に固定して読む「固定ド読み」といい、「楽譜を見て演奏する」には最適な反面、音楽の構造を理解することができない読み方なのです。

これに対し、調が変われば「ド」の位置が変わる読み方のことを「移動ド読み」といいます。

 

例えていうなら、写真と絵の違いです。カメラは今写している情景を、色の点の集合としてしか認識できず、それが山なのか海なのか人なのかがわからないのと同じです。
絵を描く、すなわち作曲するためには、ある調(キー)の中でメロディ(階名)を奏でる「移動ド」として音楽を認識する必要があるのです。

アカシメソッドの誕生

中学・高校時代にオリジナル曲のロックバンドを結成して地元・福島で活動したあと、私は、北海道教育大学函館校音楽科(現在は閉鎖)へ入学、さらに3年目の1985年に米テネシー州メアリービルカレッジ音楽科に1年間留学し、音楽理論を学びました。

それと並行しながら、もっと簡単で確実な「機能和声」の学習法はないだろうかと、様々な教則本を比較したり、小学校の教育実習で作曲の授業をしてみたりと、いろいろ試行錯誤し始めたのです。それを卒業論文にまとめたのが、明石式作曲メソッドの始まりです。(当時はまだまだ未熟なものでしたが・・・)

そして卒業後上京。このメソッドをまず自分自身が使い始め、作曲家として活動を始めました。

もちろん今でも、これを十二分に活用して仕事をしています。

その後作曲業のかたわら、「自分も作曲を始めたい」という生徒に作曲レッスンを始めたのが、1992年のこと。

こうして私の授業に使う教材として、自分の研究を少しずつ体系化したのが、ここに紹介する「アカシメソッド」なのです。これは私のいわば、ライフワークのようなものです。

アカシメソッド、5つの特徴

 

私が今までの理論を取捨選択し、様々なアイディアを取り入れて体系づけた「アカシメソッド」には、大きく次の5つの特徴があります。

1)「移動ド」を用いる

先ほど述べた通り、作曲するためには調性の機能を認識するための「移動ド読み」が必須です。

幼少期に無理な方法で、少しでも音高が違うと体調を崩すほどの「絶対音感」を体得してしまった方には「移動ド読み」は難しいでしょう。

それ以外の方であれば、「固定ド読み」と「移動ド読み」は十分共存が可能です。

2)使用するスケールは「ダイアトニックスケール(自然長・短音階)」のみ

ダイアトニックスケールとは、いわゆる「ドレミファソラシド」のことです。

この(オクターブを除く)7つの音「だけ」で、十分に音楽理論の「最初の一歩」をカヴァーできるのです。

例えば、長い間使われてきた「和声短音階」や「旋律短音階」という概念は、今となっては「借用音」「代理コード」を説明するのに歴史上の「誰か」が生み出した考え方で、私には物事をわざわざ複雑にしているとしか思えないため、思い切って割愛しています。

3)ダイアトニックコードは、メジャーコードの記号をマイナーにも用いて簡素化する

今までの音楽理論体系では、長調と短調が明確に切り離され、それぞれの機能を別々に提示してきました。

しかし、結局使っている音が「ドレミファソラシド」で、違いは「ド」から始まるか「ラ」から始まるかである以上、両者を区別し、わざわざ理論を煩雑にする必要はないと私は判断しています。

こうして、最初に理解するダイアトニックコードを、I・IIm・IIIm・IV・V・VIm・VIm(♭5) の「7つ」に統合することで、理路整然かつ実践的に「音楽の機能」を理解することができるようになりました。

4)作曲には五線譜を使わず、鍵盤を使用する

私の経験では、「作曲をする」ことに必ずしも「楽譜」は必要ではありません。

(ビートルズのポール・マッカートニーが今でも楽譜の読み書きができないのは有名な話です。)

アカシメソッド・ビギナークラスでは、まずは作曲というものがいかに簡単か、ということをわかっていただくため敢えて楽譜は使わず、鍵盤自身に脚注を入れる方法で解説します。

こう書いてしまうと「楽譜軽視」といわれかねませんが、決してそういうことではありません。楽譜は、「自分の作品を演奏者に伝える」ために今でも必須のツールだからです。あくまで「習得する優先順位」の問題です。

5)電子キーボードの「キートランスポーズ機能」を積極的に活用する

現在ほとんどの電子キーボードに搭載されている「キートランスポーズ機能」は、実は鍵盤楽器の「大きな進化」だと思っています。

なぜならこの機能のおかげで、鍵盤楽器が遂に「移調楽器」の仲間入りをしたからです。

ピアノ・オルガン・キーボードの鍵盤の並びは、「ドレミファソラシド」つまり「ダイアトニックスケール(コード)」に準拠して作られています。ところが19世紀までは構造上、鍵盤自身の音の高さを変えることが不可能でした。

つまり、「ハ長調」以外の調を演奏するためには、調毎に別々な運指を覚える必要があったのです。

これは音楽初心者にとっては大きなハードルでした。

それが、あっけなく解決してしまったのです!

ところがなぜか、これを音楽教育で積極的に使っているのを聞いたことがありません。

おそらく、ピアノを弾き教える立場の方が「違和感がある」「他のスケールを習得する妨げになる」「邪道だ!」と思い込んでいるからではないでしょうか。

でもオーケストラの世界では、移調楽器は一般的です。例えばクラリネットは、同じ運指でも音の高さが違う「B♭管」「A管」「E♭管」を、ひとりの奏者が普通に吹きこなしています。

「ドレミファソラシド」を機能的に理解できる並びに鍵盤ができている以上、キートランスポーズを積極的に作曲に活用することは、極めて合理的方法なのです。

他のメソッドとの相違点・互換性

アカシメソッドでは第1回に「度数」の煩雑な説明はありません。

音楽用語を厳選し、最小限度に留めながら、まずは実際に音を出すところから始めていきます。

それを可能にする画期的な方法が、ひとつひとつ「ミッションをクリア」しながら進めていくやり方です。

今まで意識的・無意識的に身につけている音楽能力は、人によってバラバラです。「ドレミファソラシド」を移調する力。「メジャー」と「マイナー」のコードを聞き分ける力。ひとつめのコードからどのコードに移ったか聞き取れる力。

「ドレミファソラシド」という音階の中に、実は「度数」「ドミナントモーション」などの法則が隠されています。

また「メジャー」と「マイナー」のコードを聞き分ける力を持っていれば必然的に、長三度と短三度の違いに気付くはずです。

こうやって音感をひとつひとつ「楽しく」開発していくことによって、先に煩雑な楽語を提示する必要がなくなるのです。

このように理論より「音感」の習得を優先して作曲のテクニックを学んでいくというスタイルは、今までの講座になかった特徴です。

一方で、このメソッドを体系づける時に気をつけてきたことがあります。それは、できる限り、多くの本で使われてきた表記や読み方を踏襲し、他の理論と整合性を合わせる、ということです。

(特にアカシメソッドは、基本的にポピュラー音楽理論の用語を用いて進めていきます。)

アカシメソッドでしか使わない用語や記号を用いれば、後で他の教本を参照したり併用しようとした時に、かえって混乱しかねないからです。

私とて完璧な人間ではありませんから、もっとわかりやすいやり方があるかもしれませんし、中には間違っていることもあるかもしれません。

その時にすぐに修正・補強できるようにするためにも、このことには十分注意しています。

あなたも試してみませんか?

今まで50名以上の生徒が私の下で、アカシメソッドで学びました。それまで作曲どころか楽器も満足に弾いたことがなかった生徒が、3ヶ月後にはちゃんとしたオリジナルソングを作れるようになるのです。それらの一部は自主制作のCDにもなり、その中の数名はプロデビューを果たすまでになっています。

彼らを見て、アカシメソッドの効果を十分に確信しています。

現在ネット環境が大きく発達し、動画なども簡単に見られる時代がやってきました。私も50才を過ぎ、そこでそろそろ自分のメソッドをきちんと公開し、役に立たせる時期ではないかと考えるようになりました。

そこで今回「アカシメソッド」用のホームページを作り、皆さんに広く公開するようにした次第です。

もちろんこのメソッドを学んだだけでいい曲が作れるわけではありません。作曲のノウハウを分かりやすく体系化したこのメソッドを十分に活用し、多くの方々が楽しくオリジナルソングを作れるようになれれば幸せです。

2016年12月

明石隼汰

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